数学における極限(きょくげん、limit)は、ある数列や関数がある点に近づくとき、その値にどれだけ近づくかを解析する概念です。極限は微積分の基本となる概念の一つで、関数の連続性、微分、積分などを定義する基礎となります。
極限の具体的な定義を次に示します。
数列 \(\{a_n\}\) が \(L\) に収束するとは、任意の正の数 \(\epsilon\) に対して、ある自然数 \(N\) が存在し、\(n \geq N\) のときに \(|a_n - L| < \epsilon\) となることを意味します。このとき、\(L\) を数列 \(\{a_n\}\) の極限と言い、次のように表記します:
\(\lim_{n \to \infty} a_n = L\)
関数 \(f(x)\) が \(x\) が \(a\) に近づくとき \(L\) に近づくとは、任意の正の数 \(\epsilon\) に対して、ある正の数 \(\delta\) が存在し、\(0 < |x - a| < \delta\) のときに \(|f(x) - L| < \epsilon\) となることを意味します。このとき、\(L\) を関数 \(f(x)\) の極限と言い、次のように表記します:
\(\lim_{x \to a} f(x) = L\)
次に数列 \(\{a_n\}\) の具体例を見てみましょう:
ここで、\(\lim_{n \to \infty} a_n\) を求めてみます。\(n\) が大きくなるにつれて、\(\frac{1}{n}\) は小さくなり、最終的には 0 に近づきます。このため、
\(\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0\)
数列 \(\{b_n\}\) が次のように定義される場合を考えます:
\(b_n = \frac{2n+3}{3n}\)
この数列の極限を求めるには、分母と分子を \(n\) で割ると便利です:
\(b_n = \frac{2 + \frac{3}{n}}{3}\)
\(n\) を無限大にする(\(n \to \infty\))と、\(\frac{3}{n}\) は 0 に近づくので、
\(\lim_{n \to \infty} b_n = \frac{2+0}{3} = \frac{2}{3}\)
次に、数列 \(\{c_n\}\) が次のように定義される場合を考えます:
\(c_n = (1 + \frac{1}{n})^n\)
この数列の極限は特別で、\(n \to \infty\) のときに \(\{c_n\}\) は数学定数 \(e\) に収束します。つまり、
\(\lim_{n \to \infty} (1 + \frac{1}{n})^n = e \approx 2.71828\)
次の数列の極限を求めてください:
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{n}{n+1} = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{1+\frac{1}{n}} = \frac{1}{1+0} = 1 \]
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{5n+2}{2n-1} = \lim_{n \to \infty} \frac{5+\frac{2}{n}}{2-\frac{1}{n}} = \frac{5+0}{2-0} = \frac{5}{2} \]