バッキンガムのパイ定理

バッキンガムのパイ定理の簡単な解説

バッキンガムのパイ定理は、物理量を使って無次元のパラメータを作り出す方法です。 物理量は「長さ」や「質量」、「時間」などの次元を持っていますが、 この定理では、それらの次元を使わない無次元数を作ります。これにより、 物理現象をシンプルな形で表現でき、同じ現象をさまざまな条件下で比較することができます。

次元解析の丁寧な導出

球が流体中で沈む速度に関連する無次元数を導出する例を使って、次元解析を詳しく解説します。

1. 物理量の列挙

流体中で球が沈む速度に影響を与える物理量:

2. 物理量の次元表記

それぞれの物理量を次元で表すと、次の通りです:

3. 次元行列

次元行列は以下のようになります:

物理量 M (質量) L (長さ) T (時間)
速度 \( v \) 0 1 -1
直径 \( d \) 0 1 0
密度 \( \rho \) 1 -3 0
粘度 \( \mu \) 1 -1 -1

4. 無次元数の導出

無次元数を導出するために、以下の組み合わせを使います:

\[ \pi_1 = \frac{\rho v d}{\mu} \]

それぞれの物理量の次元を代入してみます。

\[ \frac{[M L^{-3}] \cdot [L T^{-1}] \cdot [L]}{[M L^{-1} T^{-1}]} \]

次元を展開すると、以下のようになります:

\[ = \frac{[M \cdot L^{-3}] \cdot [L \cdot T^{-1}] \cdot [L]}{[M \cdot L^{-1} \cdot T^{-1}]} \]

これを整理すると、次元はすべて打ち消され、無次元になります:

\[ = \frac{[M \cdot L^{-1} \cdot T^{-1}]}{[M \cdot L^{-1} \cdot T^{-1}]} = [1] \]

したがって、\(\pi_1\) は無次元数です。

5. 最終関係式

無次元数は「レイノルズ数」と呼ばれ、次のように表されます:

\[ \text{Re} = \frac{\rho v d}{\mu} \]