バッキンガムのパイ定理は、物理量を使って無次元のパラメータを作り出す方法です。 物理量は「長さ」や「質量」、「時間」などの次元を持っていますが、 この定理では、それらの次元を使わない無次元数を作ります。これにより、 物理現象をシンプルな形で表現でき、同じ現象をさまざまな条件下で比較することができます。
球が流体中で沈む速度に関連する無次元数を導出する例を使って、次元解析を詳しく解説します。
流体中で球が沈む速度に影響を与える物理量:
それぞれの物理量を次元で表すと、次の通りです:
次元行列は以下のようになります:
物理量 | M (質量) | L (長さ) | T (時間) |
---|---|---|---|
速度 \( v \) | 0 | 1 | -1 |
直径 \( d \) | 0 | 1 | 0 |
密度 \( \rho \) | 1 | -3 | 0 |
粘度 \( \mu \) | 1 | -1 | -1 |
無次元数を導出するために、以下の組み合わせを使います:
\[ \pi_1 = \frac{\rho v d}{\mu} \]
それぞれの物理量の次元を代入してみます。
\[ \frac{[M L^{-3}] \cdot [L T^{-1}] \cdot [L]}{[M L^{-1} T^{-1}]} \]
次元を展開すると、以下のようになります:
\[ = \frac{[M \cdot L^{-3}] \cdot [L \cdot T^{-1}] \cdot [L]}{[M \cdot L^{-1} \cdot T^{-1}]} \]
これを整理すると、次元はすべて打ち消され、無次元になります:
\[ = \frac{[M \cdot L^{-1} \cdot T^{-1}]}{[M \cdot L^{-1} \cdot T^{-1}]} = [1] \]
したがって、\(\pi_1\) は無次元数です。
無次元数は「レイノルズ数」と呼ばれ、次のように表されます:
\[ \text{Re} = \frac{\rho v d}{\mu} \]